2012年7月23日月曜日

ゆで蛙にならないために

先日、協業先であるS社より、社内研修の基調講演として「当社における変化」についてご紹介する機会がありました。S社では今年から、全社をあげて「変化」に取り組んでおられ、意識改革から具体的な改善項目の洗い出し、解決策の検討と実践、実践後のレビューと進めてこられました。S社では、従来より主なターゲットであった半導体業界が不況に陥るなどの市場要因に加え、様々な内部要因から生じる課題を乗り越え、今後大きく飛躍していくために、様々な改革にチャレンジされているそうです。その中で、こうした改革に着手されているのはS社だけでなく、異業種や他社においても、同様に変化に対するチャレンジをしている企業があるということを知っていただくために、事例紹介として当社にプレゼンテーションを依頼いただいたというわけです。

当社が身を置く建設業界は、一般的に構造不況と言われている業界です。それに加え、これまで当社が多大なる恩恵を受け、多くの経験を積んできた紙パ業界もリーマンショック以降不振が続いており、当社にとっては非常に厳しい市場環境となっています。また、市場環境の変化に伴い、旧来から運用し続けてきた、様々な制度や業務プロセスにも少しずつ歪が生じはじめ、当社を取り巻く厳しい環境を乗り越えるためには、多くの改革が必要です。以下に当社でこれまで、またこれから行っていく改革について整理したいと思います。

1. 意識改革
人は意味もなく変化を強要されることには強い抵抗を感じます。これは当然の反応だと思います。ですから、まず何故変わらなければいけないのかという背景と、どのように変わっていくのかというビジョンを明確に理解してもらう必要があります。私は事あるごとに、「工事請負会社から設備のソリューションカンパニーへ」という中期ビジョンを口にするようにしています。これは、当社における改革の旗印であり、その方向性を端的にあらわした言葉でもあります。そして、トップと社員、社員どうしの情報交換、情報発信の場を創出し、トップが何を考えているのか、今何をすべきなのか、何故すべきなのか等をできるだけ伝えようと思います。(本ブログもその一環です) 
また、ライン管理職などの幹部社員は、四半期に一度2日間の合宿を行い、方針や戦略の共有、意見交換等を行っています。会社が変わるには中枢となる幹部からということで、この2日間は通常業務を行わずに集中して討議することで、意識改革と戦略の落とし込みができる場です。

2. 人事・組織改革
この4月より、事業(事業/営業戦略の立案と推進)と拠点(施工と拠点営業)のマトリックス組織を作りました。これによって、従来欠如していた事業ごとの戦略立案と、施工部隊の生産性の向上を実現します。事業統括部は、建築・環境・紙パ・産業の4事業それぞれの市場や顧客を鑑みて、中期的な事業/営業戦略の立案と推進を行います。市場の動き、顧客の特性、事業ごとの当社における課題等は、その事業によって全く異なります。これらを十分理解した上で、個別の戦略を立案できる体制を構築しました。一方で拠点となる営業所統括部では、事業横断的に受注物件の施工に従事し、生産性の高い人員配置を目指します。こうした事業と拠点のマトリックス組織構造により、全ての案件を営業と施工、中央営業と地域営業など双方から支援し合える体制を整えました。
また、同じく今年度より人事制度を改定し、従来の年功要素の強い制度から、スキルや貢献度を重視した制度に移行しました。その主旨や内容については以前の記事でも触れましたので参照してください。(人事制度改定①

3. 営業改革
上記の組織改革でも触れましたが、当社の従来の営業手法は戦略性に欠けていた部分がありました。案件があるところ、引合をいただいたところに行くのは当然として、市場や顧客、競合、当社の事業戦略に応じた戦略的なアプローチが必要です。今回の組織変更により、事業ごとの事業/営業戦略を立案する役割を持つ組織を創設し、当社における各事業の中期計画(今後どのように事業を伸ばしていくか)を検討、牽引していくことになります。
また、意識改革のところでも触れたソリューション提案という手法についても、営業におけるひとつの武器として、ソリューション推進部という提案営業を推進する技術者部隊を創設し、新規顧客開拓、既存顧客の売上シェア拡大、顧客関係の構築を目指しています。

4. 業務改革
当社の業務プロセスは20年ほど前に作られて以来ほとんど変えられることなく継続されており、その大半が過去の様々な事情を考慮して作られています。また、同時に構築されたオフコン(業務コンピュータ)の性質に依存していることもあり、あるべき業務プロセスとは乖離が生じています。
当社では4月より、採算性の向上、リスクの早期回避、迅速な意思決定等を目指して、特別チームAST (Asahi SWAT Team) を編成して、社内の業務プロセス改革を進めています。本プロジェクトでは、現在の業務プロセスを全て洗い出し、あるべき姿を検討するととともに、新しい業務システムの活用を並行して進めています。詳しくは改めて説明したいと思います。




改革というのは痛みを伴います。自分自身が変わるのは面倒ですし辛いものでもあります。しかし、外部環境に適応し、変化していくことは、生き延びていくためには必ず必要なことなのです。「ゆで蛙」という表現があります。蛙を熱湯の中に放り込めば、熱くて飛び出してしまいます。しかし冷水の中に蛙を入れて徐々に熱していけば、水温の変化に気づくことができずにそのままゆでられてしまうというわけです。外部環境は少しずつ変化しています。こうした環境の変化を敏感に感じながら、適応しようという努力を継続するということが、変化の激しい時代には求められているのだと思います。環境の変化を意識しながら、この改革を一緒に乗り越えていきましょう。


2012年7月2日月曜日

ご安全に

今週は全国安全週間です。会社や協力会によるパトロールが様々な現場で行われることと思います。以前、あるお客様から伺いましたが、事故や災害は守るべきルールを守らなかったことによって発生することがほとんどだそうです。本当はルールで定められていることがあるけれど、少しくらいいいか、いつもの作業だから大丈夫だろう、そういった気持ちから意図的にルールを守らなかったことが原因で発生するということです。

そういう意味では交通ルールに非常に似ています。速度制限が40kmとなっていても、速度制限通りに走っている車はほとんど見ません。むしろ、ノロノロ走っていて迷惑がられることさえあります。しかし、それは40kmを超えていることに気づかないのではなく、少しくらいスピードを上げても大丈夫だろう、自分のドライビングテクニックであれば問題ない、とある意味で意図的に速度制限を破って走行していると言えるでしょう。

では、片側が断崖絶壁になっていて、連続カーブで対向車が見えにくく、かつ双方向にすれ違うことが難しいほど狭い道路ではどうでしょう。おそらく速度制限が何キロであろうと、スピードを落とし、慎重に走行しませんか?ですから、そうした危険な道路では、必然的に交通ルールは守られ、事故も起きにくい状況にあるのではないかと思います。工事現場でも同様です。初めてのお客様、初めての作業、大規模でスケジュールがタイトな案件、そうした現場では、皆が慎重に作業を行いますからほとんど事故が発生しません。逆に、何度も経験している作業、慣れた現場、慣れたお客様、といった現場で起こりがちです。

ですから、事故や災害は気持ちの持ちようで大きく変わると言えます。危ないという意識があればルールを守り事故は起きにくいわけですから、どのような現場で、どのような作業であろうと、そうした危機意識を持ち続けられるかということが影響してくることになります。安全活動自体、同じことの繰り返しですから、「慣れ」につながりやすいです。そのためにも安全管理部門には、いつも新しい刺激が与えられるような施策を期待したいですし、個々の現場でも常に作業員への意識付けが必要ですね。意図的にルールを破ろうとしたその瞬間に、このことを思い出して、踏みとどまってほしいと思います。

ご安全に。

2012年6月13日水曜日

仲間との思い出

昨日は近内さん、小幡さんの送別会でした。お二人は建築、プラントそれぞれの事業を役員として引っ張ってこられた方で、約40年にわたって当社に貢献いただきました。ほぼ全ての参加者から一言メッセージをもらいましたが、皆さん思い出がありすぎてとても一言では語りきれず、後半はスピーチ中に大半の参加者が座ってしまう状況に。。。私がこの世に存在する前から当社で活躍されていたわけですから、確かに思い出の数も深さも大変なものでしょう。スピーチを聞いているとお二人がどれだけ当社に貢献いただいたかがよく分かります。そこで気づいたのは、どちらかの方とは深い関係にあったのですが、もう一人とはほぼ接点がありませんでしたという人が結構いたことです。前述したようにお二人の経歴は、建築とプラントで異なるために仕事上のお付き合いはどちらかに偏ってしまっていたのでしょう。それにしても当社にはわずか200名の社員しかいませんから、お二人が40年間在籍している中でほとんど接する機会がなかったというのも寂しいことです。当社は全国各地に拠点がありますから、社員は散り散りになり、勤務地や担当事業によって必然的に交流が限定的になりがちです。しかし、会社の同僚というのはお互い助け合う仲間であり、また切磋琢磨するライバルでもありますから、ひとりでも多くの社員と交流を図ることで、自分自身のスキルや経験も上がり必ず成長できるはずです。今年度から、建築とプラントの壁を取り除き、事業間の人材交流を図ることで、生産性の向上と経験値の共有を目指しています。また、研修や懇親会など勤務地や事業の枠を超えて交流できる場を多く作るように意識しています。こうした機会をうまく活用して、是非会社在籍中に交流したことがないという人をなくして、一人でも多くの仲間と深い思い出を作って欲しいと思います。退職時のスピーチネタが少しでも増えるように、、、改めまして、お二人の今までの功績に感謝したいと思います。有難うございました!

2012年5月23日水曜日

会社人生は「評判」で決まる

以前よりお付き合いのあるコンサルタントの方が最近執筆された非常に刺激的なタイトルの本を読みました。通常の人事評価に加えて、組織内の「評判」がどのように会社内の人事に作用するのか、また「評判」を上げたり下げたりする要因はなんであるかなどが書かれており、非常に共感できる内容でした。

昨今、様々な意思決定において「評判」が重視されることが多くなってきています。電化製品などを買う際に必ず見るのがカカクコムが運営する価格.comです。その時点での提供価格を比較して最安値のショップを提示してくれるうえ、実際に購入、使用した感想や意見が投稿されているのでとても参考になります。また、レストランを探すとき、私が最も信頼をおいているのが、同じくカカクコムが運営する食べログです。このサイトで高評価かつ、投稿されているコメントから、私の好みと近しいと感じられれば、行ったことのないお店でもほぼ間違いありません。最近では、お店の名前や、電化製品の名前で検索をすると、そのお店やメーカーのホームページより上位に、クチコミサイトや個人のブログなどが表示されることからも、クチコミ=評判が重視されていることが分かります。これは、クチコミを読むことで、実際に使用したり、食事をしたりする疑似体験ができ、イメージを作ることができるからではないかと思います。

抜擢人事などを検討する際には、過去の人事評価の結果だけでなく、その人の上司、同僚、部下がそれぞれどのような見方をしているのかということを参考にすることがあります。スキルを高め、結果を出しているということはもちろん重要なのですが、やはりマネジメントに登用するような人であれば、直接人事評価には表れにくい、人格や人望といった要素も持ち合わせている必要があります。そうした要素が「評判」といったかたちで表れてきます。人事上の意思決定の際にも、事前に評判を確認することで、その人を登用した際の良い面、悪い面を事前にイメージすることができるということから、意思決定において重要な意味を持ちます。

評判というものは、故意に作ることができるものではありません。以前、まさに上記の食べログでやらせ投稿が問題になったことがありました。一時的にサイトの信頼性が懸念されましたが、私の中での信頼度は変わっていません。やはり、意図的に操作されたコメントはどこか不自然で、実体験に基づいたものではないことが伝わってくると思います。逆に実体験に基づく真の投稿は、非常に臨場感があり、共感できるものが多いものです。

本書では、評判の悪い人というのは、
  1. 自分の実力を誤認している、ある意味「自意識過剰なナルシスト」
  2. 自分はさておき他人のことをとやかく言う、いわゆる「評論家」
  3. 自分の立場を理解していない、勘違いの大きい「分不相応な人」
とあります。
逆に評判の良い人とは、
  1. 自分自身をよく分かっており「他社への十分な配慮のできる人」
  2. 「評論家」の逆で、労をいとわない「実行力の人」
  3. 自分の立場や役割を正しく理解し「本質的な役割の果たせる人」
評判の良い人の項目は、一見すると当たり前だなという感じを受けますが、どちらかというと評判の悪い人の項目には共感できるところがありませんか? 自分の周りの評判の悪い人というのは、必ず上記のどれかに当てはまっているのではないでしょうか。詳しくは本書をお読みいただきたいと思いますが、やはり組織での評判というのは、”自分”を理解し、”相手”を理解し、”組織”を理解するということのような気がします。その理解に欠けた、空気の読めない言動が評判に影響を及ぼすのでしょう。先にも言いましたが、評判は日々の自然な言動から生まれるもので、意図的に作り出すことはできません。ですから、他人の目ばかり気にして評判を上げようとするのは逆効果です。しっかりと自分を見つめ、正しい言動をしていれば、自ずと評判があがり、自分自身をサポートしてくれるはずです。

2012年5月14日月曜日

マナーの常識

先日「たけしのニッポンのミカタ」という番組を見ました。若者VS大人のマナーがテーマで、若者、大人双方が感じるマナー違反について意見交換をするというものでした。私くらいの年齢ですと、どちらの立場の意見にもうなずけるところがあり、中立的な立場で番組を見ていました。携帯電話、特にスマートフォンの普及に伴うマナーのありかたというのは、若者、大人ともに考えなくてはいけないのかなと感じました。番組内で非常に面白い映像が紹介されていたので紹介します。あるヴィオラ演奏会の途中で、携帯電話の着信音が鳴ってしまった時に、演奏者がとった行動です。この奏者は、自分の演奏を邪魔されたにも関わらず、即興で着信音を演奏してお返しするという粋な演出をしました。
しかし、ビジネスシーンでマナー違反があった場合、相手がいつもヴィオラ奏者のように粋で広い心の持ち主とも限りません。その場で咎めてくれる方であればまだましですが、何も言わずにその人や会社が、非常識のレッテルを張られてしまうことも考えられます。

ビジネスマナーというものは、会社の文化とも通じていると捉えられることもあり、会社でしっかりと教えておかなければ、その社員だけでなく会社のイメージにも大きな影響を与えます。一度身につけてしまえばクセになりますから、自然に振る舞うことができ難しいことではありませんが、逆に間違ったマナーがいつの間にか身についてしまうと、悪気なく永遠にマナー違反を繰り返すことにもなりかねません。

私は社会人になって初めてついた上司にずいぶん色々とマナーを教えていただきました。今までの社会人人生の中で自分のものとして身についていますので、今では私の中の常識になっています。しかし、常識になっているがゆえに、この常識から外れたシーンに遭遇すると大きな違和感を感じます。最近違和感を感じたマナー(マナー違反)をいくつか紹介します。

  • 目上の人に「ごくろうさま」と言うのは失礼である。(「お疲れ様」もしくは帰宅時には「失礼します」と言う)
  • エレベータでの別れ際では、ドアが完全に閉まるまで頭を下げている。
  • 相手の話は絶対に遮らない。特に相手から質問をされている途中で、その回答を話し始めない。
  • メールで何かを依頼されたら、了解したこと、対応の時期などをすぐに返信する。
  • 殿は目下の人に対して使用する、もしくは役職の後につける。役職の後に様をつけない。
  • 各位の後に殿や様をつけない。
そのレベル感はまちまちですが、私が当社に入社してから何度か当社社員による上記マナー違反が複数回見受けられました。特に、以前「役職名と敬称」でも書きましたが、不適切な敬称をつけて話したり、メールを送信したりするのは、非常に恥ずかしいことだと思いますので最低限身につけてほしいと思います。マナーとは、仕事ができるできない以前の問題です。いくら仕事ができても、マナーが身についていない人とは仕事はしたくないと仰る方も少なくありません。マナー違反を見かけたら、躊躇せずに指摘して正すようにしていきましょう。

2012年4月17日火曜日

質問をするためによく理解しておく

皆さんは1日にどれくらい質問をしますか? 何か不明なことがあったときに、人は質問をします。そしてその答えを入手することで、知識を身につけ成長します。私の3歳の息子は、毎日50回は質問してきます。

息子:どうして○○なの?
父:△△だからだよ。
息子:△△って何?
父:××をすることだよ。
息子:どうして××をするの?
父:××したいから。
息子:どうして××したいの?
父:どうしても!
息子:ねえ、どうして?
父:・・・(無視)

みたいなやりとりが毎日続きます。しかし、このやり取りは、1年前にはありませんでした。3歳になって、色々な知識、経験、感情を蓄積し、本人なりに色々と考えられるように成長したから、質問攻めができるようになったのでしょう。この質問のやりとりは、大抵の場合は親サイドが、面倒になって強制終了させてしまいますが、まれに「なるほどな」とか「いいところをついてくるな」と思わされることがあります。質問されることで、こいつよく分かってるな、成長したなという印象が与えられるわけです。

よく、「何か質問ある?」の問いに、「何を質問していいか分かりません」と答える人がいます。そうです、分からなければ、質問ができないのです。質問は、分からないときにするものなのですが、分からな過ぎると、質問もできないのです。ですから、質問をするということは大事なことです。私は新入社員に、「必ず毎日質問をすること」と入社当日に話をしました。初めての社会、環境、会社、仕事、、、その中で毎日分からないことの連続です。ですから、少しでも分からないことがあれば、そのままにせず、すぐに質問をしてクリアにするようにと言いました。(新入社員の皆さん、覚えてます??) しかし、質問に至るまでのことをよく聞いて理解していなければ、質問をしようと思ってもできません。ですから質問をしようとすれば、自然と話をよく聞くようにもなるのです。そして、よく話を聞いたうえで的を射た質問をしれば、「よく話を聞いているな」という印象を相手に与えますから、会話やコミュニケーションが発展します。

お客様とのコミュニケーションにおいて質問は非常に重要です。デキル営業は「よく話す」と思われがちですが、一方的にマシンガンのようにセールストークをするのは最低な営業です。営業に必要なのは「よく話す」ことではなく、「適切なことを話す」ことです。相手が求めていることを伝えなければ、セールストークもただの騒音になってしまいます。相手が求めていることを知るためには、質問をして「よく聞く」ことが必要です。ですから、「よく話す」ことより「よく聞く」事の方が、遥かに重要なスキルなのです。

また、分からないことだけでなく、本当は分かっていることでも敢えて質問することで、お客様のことをよく理解しているという印象や、理解したいという熱意を与えることができます。そのためにも、お客様のことをよく理解しておくことが必要です。単に、全然分かりませんという態度で臨むのではなく、「私の理解はこうですが、これで正しいですか?」などの質問であれば、なおいいでしょう。重要なことは、質問をするためによく理解しておくということ、そしてできるだけ多くの質問をするということです。

2012年4月13日金曜日

品質かそれともコストか

ある特殊紙メーカーのお客様が、「最近、品質を重視すべきかコストを重視すべきなのか分からず悩んでいる」という話をしておられました。お客様が製造しているのは、精密機器に使われる非常に繊細な製品であるため、その品質には細心の注意を払っておられますし、また高品質であるがゆえに、現在世界トップシェアを維持しておられます。しかし、最近では海外企業とのコスト競争が激しく、多少の品質は落としてでも、価格を下げてほしいという要求が強い。周りを見渡しても結局”安い”方が勝っているように見えると仰っていました。日本が世界に誇る製造業、特に電気業界は、完全に中国、台湾、韓国などの企業にシェアを奪われ、すでに過去の栄光となりつつあるように思えます。彼らは国のバックアップのもと、急速なグローバル展開を実現しています。長引く円高をはじめ、政治的な問題も多分にあるものの、私たち日本の製造業自体も意識を変えなければいけない部分もあるのかもしれません。

日本の製造業は、長年に渡りその品質を売りにしてきました。今でも品質は世界トップクラスであると思います。しかし、世界の市場では、多少品質を落としてでも低価格であることが優先されつつあります。私たち日本人も、日本の製造業の品質を自負しつつも、消費者の立場となると一転してコストを優先するケースも増えています。今求められているのは、品質よりも価格、もしくはイノベーション(革命)です。iPhone, iPadといった携帯端末は、明らかに私たちのライフスタイルに革命をもたらしました。品質ももちろん高いですが、革命をもたらしたことが、大ヒットにつながった要因だと思います。逆に革命をもたらすことができないのであれば、品質よりも価格が重視されるということでしょう。しかし、今まで品質最優先で培ってきた”職人気質”は、そう簡単に変えられるものではなく、そこに市場ニーズとのギャップが生じているのだと思います。価格を下げろと言われても、体にしみついた職人魂が品質を下げるなどということを許しません。最高品質のものを最低価格で提供できれば問題ないのですが、それがそう簡単ではないためにジレンマが生じます。

私は、この悩みは建設業を含む全ての製造業で起きていると思っています。まさに当社もこのジレンマに悩まされています。私が社員に当社の強みは何かと聞けば、必ず高品質、納期厳守、誠実などを挙げてきます。現場の仕上がりを他社施工と比較すれば一目瞭然、機能性、見た目ともに抜群で、随所に細かい配慮がされています。長年に渡って受け継がれてきた職人魂を感じます。しかし当社も今、熾烈なコスト競争の真っただ中にいます。その競争の勝つために、品質を落として施工するか?そんなことは職人魂が許しません。そこにジレンマがあるわけです。

このお客様と話をしたうえでの私の結論としては、まず品質を維持しながらコストを下げる努力を最大限に行うこと。そのうえで、品質重視であるかコスト重視であるかをお客様に選択してもらうということです。もちろん、低品質でいいですか?と聞けば、いいと言うわけがありません。ですから、コストを下げるための様々な仕様のオプションをお客様に提示し、どこまでの仕様ダウンは許容範囲であるかを見極めていく必要があると思っています。最近よく、松竹梅もしくはAプラン/Bプランで見積を出すようにと話しています。もちろん、複数の設計を考慮しなければいけないため、見積作成には時間がかかります。しかし、このひと手間をかけて、お客様に価格と仕様の双方を納得いただかなければ、受注もできませんし、win-winの結果にもなりません。自分たちの勝手な思い込みで最高仕様の設計をすることは、単なるエゴにもなりかねません。この点でも、お客様のニーズを読み取るということが必要になってくるのだと思います。