2013年7月21日日曜日

論理と共感のバランスがいい人

先日私が尊敬する経営者のひとりである、柴田励司さんが書いた「遊んでいても結果を出す人、真面目にやっても結果の出ない人」(成美文庫)という本を読みました。一見遊んでいるように見えるけれど、何故がいつも結果を出してしまう人がいます。この人たちは、実は現役のトップリーダー300人と共通する特徴がたくさんあるそうで、この共通点について触れています。正直、本の前半部分はあまり共感できなかったのですが、後半のトップリーダーとの共通点11項目の説明は、自分自身もこうありたいとつくづく感じるものでした。この11項目の中から、「論理と共感のバランスがいい人」について紹介します。このことは、私が最も共感し、かつ皆さんにもお客様に接する時に是非意識していただきたいと思った項目です。

とあるミスが原因で障害が発生してお客様からクレームが入った。この時Aさんは、「大変申し訳ありませんでした。さぞお困りでしたでしょう。」と深く謝罪した後、すぐに障害に対する具体的な対処法について説明をした。その後に、ミスが生じた原因について説明をして、二度とこのようなことでご迷惑をおかけしないよう努めますと改めて頭を下げた。一方Bさんは、謝罪はそこそこに、すぐに何故このようなミスが起きたのかを長々と説明し、その後対処法について説明し、最後に改めて謝罪した。言うまでもなく、Aさんはその後お客様との信頼関係を回復したが、Bさんは深い溝ができたままだった。

このふたりは、全体的にはほぼ似たような対処をしているのですが、その順序が違います。障害で困っているお客様は、腹を立てているわけですし、一刻も早く対処して欲しいと思っています。ですから、まず深く謝罪をして怒りを静めてから、すぐに対処法について説明をして安心をしてもらうという順序が必要です。しかし、お客様の気持ちを考えずに保身に走ろうとすると、まず言い訳が先行してしまい、お客様の怒りを倍増させることになります。お客様がどのような気持ちでいるのか、何に困っていて、どうして欲しいのかをよく考えて、そこに共感することが重要なのであって、何故ミスが生じたのかをいくら論理的に説明しても、お客様の気持ちを動かすことはできません。

これは営業活動においても同じことがいえます。お客様が困っている状況、ここにはビジネスチャンスが眠っています。この困りごとに対して、解決策を提示することが、いわゆるソリューション営業です。しかし、お客様の困りごとに対して共感することをせずに、こちらのサービス内容ばかりを並べ立て説明しても、お客様を動かすことはできません。まずは、お客様が何に困っているのかを聞き出し、その課題に対する理解を示す必要があります。「こういう事が生じると困りますよね?でもこういう事情で、すぐに対処しようとしても難しいんですよね?よく分かります。」といった具合に、あたかも自分もお客様と同じ境遇にあったかのように話をしてあげることで、「この人は自分を理解してくれている」という気持ちになり、安心感や信頼感を醸成することができます。その後に初めて解決策を提示することで、「信頼している人からの提案」となり、初めて動いてくれるのです。とかく、営業活動というと、自社の製品やサービスをしっかり説明して売り込もうと思いがちですが、自分のペースで説明したり、自分を理解してもらいたいと自分本位になるのではなく、お客様の気持ちに立って共感することに最も時間を割くべきなのです。

私自身も、社員の皆さんに色々と動いてもらうためには、論理的に説明するだけでなく、皆さんの立場に立って気持ちを理解することに努め、まずはお互いに共感しなければいけないなと改めて感じました。

2013年7月1日月曜日

草食?肉食?

先日日経電子版でこんな記事を見ました。「草食系男子は就活に不利ってホント?」
多くの大企業では、「草食系男子は積極性や上昇志向に欠ける」「自分をアピールしない」「集団に入ると何も話せない」といった理由で敬遠されることが多いといわれる一方で、「表面的にはやさしく見えても、芯が強く仕事への忠誠心もある」「コツコツと積み上げる根気のいる仕事に向いている」「一度スイッチが入ればぐんぐん伸びる」など、草食系男子を高く評価している企業もあるそうです。私も毎年新卒採用に携わりますが、説明会や面接の場で積極的に自分をアピールしてくる元気のいい学生、いわゆる体育会系の学生はほとんど見なくなったなという印象があります。また、他社の知り合いと話をしていても、勉強ができなくてもいいから、もっと元気で体育会系のノリがある若者が欲しいという声も少なくありません。確かに学生時代にスポーツに打ち込んできたという履歴書を見ることが少なくなりましたし、(それと関係があるかは分かりませんが)ガツガツした意欲やアツイ気持ちを丸出しにしてくる肉食系若手が少なくなってきていることは事実なのかもしれません。

「肉食」の定義がはっきりはしていませんが、私は必ずしも肉食系ばかりが良い人材だとも思いません。会社や組織には様々なタイプの人が必要です。例えば営業という職種において、一見ガツガツとお客様にアプローチをしていく人が向いているようにも思いますが、穏やかでも緻密で粘り強い営業スタイルが向くこともあります。お客様の人間性によっても好まれるタイプが変わってくることもあります。ですから、ベストなのはお客様が何を望んでいるかを見極めて、そのニーズを満たせるよう考えてアプローチできる人であって、それができれば肉食でも草食でも構わないのです。

私は以前より「知的体育会系」という言葉を使っています。考えてばかりでなかなか動かないわけでもない、何も考えずに動き回るでもない、動きながら、実践しながら、反省し、考えられる人をそのように表現し、皆さんにも知的体育会系になってほしいと話してきました。大事なことはきちんと考えられる人なのかということです。私はこのことを学生向けの会社説明会でも話しています。学歴、専攻、性別などのプロフィールは一切選考に関係ない。知的体育会系であるかどうかを重視したいと。ですから面接では、今までの人生においてどれだけ考えて判断して生きてきたのかを見るように心がけています。友人や部活の仲間と揉めたり意見が対立したときには、どのように対応したか。人生最高の出来事や成功体験はどのようなことで、その時どう感じ、成功要因は何であったか。逆に人生最大のピンチはどうやって乗り切ったか、などを聞くことで大体のことが見えてくるものです。緊張していてうまくアピールできなくても、事実としての身近な体験を話してもらう中で、知的体育会系の素養を兼ね備えているかどうかを見るようにしています。