ヤマト運輸とAmazonの問題に見る重要なテーマとは
先月あたりからヤマト運輸をめぐる動きが頻繁にメディアに取り上げられています。これらの動きを一言で要約すると、アマゾンをはじめとするネット通販の急増によって、配送現場が疲弊し限界に達しているため、値上げに踏み切ることにしたというものです。
私はここには数多くの考えるべきテーマが存在していると思っていますが、その中でも大きなテーマはふたつ。ひとつは、「win-win-winでなければいつか破綻する」ということ。もうひとつは、「現場の創造性を確保するためには余裕が必要だ」ということです。
今回は前者について話をしたいと思います。
実は私もかなりのAmazonユーザーでして、毎月4~5回はAmazonを通じて買い物をしています。Amazonは年会費3900円を支払うとプライム会員となり、基本的には翌日配達、送料無料となっています。(地域や商品によって差があります)
また、プライム会員になると、音楽や映画もネットを通じて聴き放題、見放題。Apple Musicが980円/月ですから、音楽配信だけでもAmazonの方が断然格安です。
店舗での買い物とネット通販を比較した際のネット通販の課題は、実際に商品を手にとって確認することができない、配送に時間がかかりすぐに手元に届かない、配送料がかかるということかと思いますが、すでに買うものが明確になっているのであれば、翌日配達、送料無料のAmazonであれば課題は全てクリアされます。
私はAmazonの回し者ではありませんが、こうしたメリットを高く評価してAmazonでの買い物を続けてきました。しかし、ヤマトをめぐる報道に触れると、送料無料をいつまでも続けることには無理があると感じます。
商流上の力関係など成り立たない
一消費者の立場からすると、欲しいものが翌日配達、送料無料で届くと言われれば、こんなに素晴らしいサービスはありません。しかし、送料無料とはいっても、配送自体にはコストがかかっているわけですから、誰かがその費用を負担しなければならない。
今回明らかになったのは(だいたい想像がついていましたが)、Amazonとヤマトの力関係から、かなりの割合でヤマト側が負担していたということです。送料無料とすることで、Amazonの売上やネット通販市場が飛躍的に伸びました。そうなると消費者とAmazonはwin-winですが、配送サービスを破格の値段で請け負わされているヤマトだけがlose。win-win-winの関係になっていないため、歪みが生じて今回のような問題になってしまったわけです。
今の世の中、1社単独でサービス提供できる時代ではありません。様々なビジネスパートナーと一緒にサービス提供することが当たり前になってきていますから、自社とお客様がwin-winであれば良いと考えていては長続きしません。サービスをともにつくりあげているビジネスパートナーにとってもwinとなるようなwin-win-winのモデルでなければ、いずれ破綻してしまいます。
今回のヤマトの問題においては、送料無料というお客様メリットと、ネット通販売上を上げたいというAmazonの成功シナリオだけを考え、配送を担う重要なビジネスパートナーであるヤマトをなえがしろにした結果、モデルが崩れてしまっているわけです。佐川急便はすでにAmazonのビジネスから撤退しているようですので、ここでヤマトに撤退されたらAmazonの配送を担ってくれるパートナーがいなくなり、Amazon自体も破綻しかねません。Amazonや消費者である私たち自身もある程度の配送料を負担することでバランスをとっていくことが必要になるのでしょう。
商流上の力関係、つまり発注する側とされる側では、する側の方が力が強く儲けることができる、などという関係はもはや成り立たないのです。
Win-win-winは最大かつ永遠に追求すべきテーマ
当社においても協力会社との協業なくしてビジネスは成り立ちません。お客様に価値を提供することはもちろんのこと、協力会社のビジネスの成功、当社業績の維持拡大も同時に実現させていく必要があります。
お客様からの厳しい要求、同業者との競争激化の中で、win-win-winのモデルを成り立たせることは非常に難しいのは事実です。しかし、お客様にとってのwin、協力会社にとってのwin、そして当社にとってのwinが何であるかをよく見極め、うまくバランスを維持していくことが求められています。
win-win-winの実現は事業継続していくための最大かつ永遠に追求すべきテーマです。このこと常に意識しながらビジネスの組み立てをしていきたいと思います。