2012年2月27日月曜日

人事制度改定④

今回は具体的な人事評価の手法について説明します。新人事制度では、年齢や勤続年数よりもスキルや成果の要素を重視した体系になっています。しかし、スキルや能力を持っているかどうか、もしくは成果が出たかどうかという結果主義で評価すると、すぐにひずみが出てきてしまいます。能力が高くても、その能力が発揮できず成果が出ないこともあるでしょうし、また逆に能力が低くても運がよく、たまたま成果が出てしまうこともあります。つまり、能力をもっているかどうかと、成果が出るかどうかは、必ずしも一致せず、持っている能力を発揮して、その結果として成果につながったかどうかを見る必要があります。

そこで、新人事制度では「目標管理」という手法で評価を行います。「目標管理」というと、各自の立てた目標とその進捗を管理して、目標が達成できたかどうかによって評価をつけるというイメージを受けます。確かに目標の設定とその達成度で評価を行うのですが、それだけで捉えると少し本質とズレてしまいます。そもそも「目標管理」というのは、"Management by Objectives"(以下MBO)の日本語訳なのですが、実はこの訳があまり適切ではありません。MBOとは、目標設定およびその進捗度、達成度を確認することを通じて、社員の方向性をひとつにしたり、育成をしたりするマネジメント手法です。つまり「目標を管理する」というよりは「目標によってマネジメントする」という方がより本質に近づきます。ですから、誤解を避けるために、あえて「目標による管理」とか、英語のままMBOと呼ぶケースも少なくありません。

当社が導入する目標管理では、全社員が半年に一度、半期に達成しようとする目標を設定し、期末にその達成度を自分自身で評価します。つまり、従来は非公開であった評価項目を自分自身で設定して、その結果を自分で振り返るということになります。自分自身で評価項目を設定するわけですから、何をすれば評価が高くなるかは明白です。しかし、勝手な目標を立てて、勝手に自己評価したのでは統制がとれませんから、目標設定後に上司と面談をして、その内容について合意してもらいます。そして、期末にも再度面談を実施して、評価結果についても合意してください。

目標を設定する際に重要なことは、部門の目標を達成するための自分自身の目標を検討することです。目標管理を実施する前に、部門長は自部門の目標を設定して所属員に公開し、次にその目標達成に貢献できるような目標を、個々が設定するのです。言うまでもなく、部門の目標は、その上位組織もしくは会社全体の目標を達成するための部門目標として設定してありますから、会社全体->上位組織->自部門->個人 の流れで目標設定がされることになり、個々の目標は必ず会社の目標を達成するためにあるということになります。つまり、全社員が同じ方向に向かって進んでいくことができるようになるわけです。

期末の評価の際に重要なことは、評価者が期初に立てた目標が厳密に達成できたかどうか、ということを重視するのではなく、もし達成できなかったのであれば、何故達成できなかったのか。努力不足なのか、それともやむを得ない事情により期初の目標から逸れた業務をする必要があったのかなどを把握する必要があります。後者のケースでは方向性が変わった後に、どのような行動(努力)と成果が伴ったのかを整理して、軌道修正後の評価をしてやればいいのです。つまり、期初に立てた目標が達成できたかどうかが重要なのではなく、期中の行動が正しいものであり、成果が部門目標に貢献するものであったかどうかを把握して、その行動を認めることが重要なのです。その一方で、能力不足や行動の仕方が悪く目標達成ができなかった場合には、その理由を本人に気づかせ改善策について共有することで育成につなげることが重要です。単に「できなかったね」として終わらせるのではなく、何が足りなかったのか、どうすればよかったのか、そしてどうすれば改善されるのかを評価を通じて理解させてください。

このように、評価は単なる賞与や昇給を計算するための方程式としてだけでなく、そのプロセスを通じて組織マネジメントや人材育成を行うためのマネジメント手法と言えます。こうした考え方は従来なかったことですし、いきなり導入してすぐに機能するとは思えません。何より、評価をする側の手腕が問われますので、それ相応のトレーニングも必要でしょう。まずは、全社員がこの評価の考え方を理解して、何年かにわたって運用していく中で定着していければ思っています。まずは、このプロセスを通じて必然的に深まる上司と部下のコミュニケーションからスタートしましょう。

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