2012年12月4日火曜日

悩みは皆同じ

先日、当社の業務改革S.W.A.Tプロジェクトを支援いただいている日揮情報システムのセミナーで、講演をする機会がありました。まだ社内での利用開始前ではありますが、現在導入中の原価管理システムのユーザー事例として講演してほしいという依頼があり、当社の宣伝にもなるため承諾することにしました。私の前後のプログラムは、清水建設、西松建設と錚々たる方々の講演で、かなりプレッシャーでしたが、当社の現状の課題点と改革への思いをありのままに伝え、プロジェクトの進め方、スケジュール、システム構成、プロジェクトのポイントなどを付け加えた内容で30分程度のプレゼンテーションとしました。

課題点と改革への思いについては以前から話している通りですが、本プロジェクトの肝となるポイントについて、講演の内容を共有したいと思います。

1. あくまで業務プロセス改革中心
このプロジェクトは情報システムを入れ替えることが目的ではなく、業務プロセスを改革して、利益につなげることが目的です。情報システムはそのためのひとつの手段でありツールにすぎません。そこで、まずはシステムから離れて、現状のプロセスを理解し、そこに潜む課題の抽出と解決策の検討に最も多くの時間をさきました。

2. 最小の投資で最大の効果
繰り返しになりますが、このプロジェクトは低下した利益を向上させることが目的ですから、多大なコストと時間をかけるわけにはいきません。そこで、通常はコンサル側で行うような書類作成もプロジェクトメンバーで行い、その分の費用を下げました。次に、システムのカスタマイズは最小限とし、できる限りパッケージの機能に自社の業務を合わせるようにしました。その結果、開発費は最小限に抑え、導入スケジュールも短期で終わらせることができました。

3. ベンダー選定に時間をかけない
今回は日揮情報システムをコンサルタント、またシステムベンダーに選びましたが、ベンダー選定にはほとんど時間をかけませんでした。それは、ベンダー選定に無駄に時間をかけるより、すぐにプロジェクトをスタートさせ、効果を出したかったからです。日揮情報システムが建設業界に精通していること、またこのシステムが多くの大手建設会社で実績があることはわかっていましたので、彼らを信頼して任せることにしました。会社が本気で改革に取り組む意思があり、ベンダーとの信頼関係さえあれば、誰と組んでも大差はないのです。

4. その他
その他、このプロジェクトで意識したことは、プロジェクトリーダーの選定です。このプロジェクトは、結果的には現場に多少負荷をかけることになります。ですから、現場のことをよく理解している人でなければ、プロジェクトを推進することはできないと思いました。そこで、現場一筋30年のトップクラスの人にプロジェクトリーダーになってもらいました。現場の人達が一目置く人が、プロジェクトの目的をしっかりと理解した上で進めなければ、業務改革は成功しません。

これらのポイントは、業務改革を行う上で、どの会社でも考慮すべき内容だと思います。セミナー後に参加者との懇親会がありましたが、会社の規模は違えど、抱えている悩みや課題はどこも同じであると感じました。会社(現場)の状況を見える化し、意思決定を迅速にして、利益確保とリスク回避を行いたい。これは各社共通の課題です。それをどのように解決していくか、多少の手段は異なっても、目指す方向は皆同じ。当社でもプロジェクトが進み、全社での利用が進めば、面倒なことも不満もでてくるかもしれません。ただ、この改革は厳しい環境を乗り越えるために、会社の規模にかかわらず誰もがチャレンジしていることであり、このチャレンジに成功した者のみが生き残り、成長できるということを理解して、改革に臨んでください。

2012年11月1日木曜日

ホームページリニューアル!

本日から当社のホームページがリニューアルオープンしました。ホームページは企業の顔です。お客様でも、競合でも、ビジネスパートナーでも、学生でも、その会社がどんな会社なのか知りたければ、まずホームページを見ます。その時の第一印象で、信頼できる会社か、面白そうな会社か、自分のニーズに応えてくれそうな会社か、そのような判断がくだされることすらありますし、そのままホームページを通じてコンタクトをとることもあります。また、最近ではSNSなどによるネット上のコミュニケーションや情報流通は爆発的に増加しており、素晴らしい宣伝につながることもあれば、マイナスイメージをうえつけることにもなり、企業はこうしたインターネット上の情報流通に真剣に対応する必要があります。このブログも、社員向けメッセージの発信ツールとして始めましたが、最近では多くの社外の方より、読んでるよと声をかけていただくことも増え、重要なコミュニケーションツールであると同時に、その宣伝効果の高さを再認識しています。

今回のホームページ作りで最も意識したのは、当社が今までに蓄積してきた素晴らしい技術や経験の全てを分かりやすく説明して、社内外の多くの方に知っていただきたいということです。当社はメーカーではありませんので、売り物はこれです、と一言で説明するのが難しく、社員でも当社の「ウリ」をうまく伝えられていないというのが正直なところです。また、当社には様々なノウハウや経験を持った人間が全国各地に散らばっており、そのひとつひとつを集めると結構な品揃えになるのですが、逆に社内における認知度が限定的です。たったひとりの社員がもっているノウハウでも、それは会社の財産です。その財産について理解を深め、社員全員がお客様に説明できるようにして欲しい、そんな思いでコンテンツづくりを進めました。まだ掲載しているコンテンツはほんの一部ですし、これからも新たな「ウリ」は生まれ続けていくでしょう。今後も継続的に内容を充実させていきますから、まずは社員の皆さんがこの内容を知らないということがないよう、しっかり中身を確認してください。また、社外の方も是非この新しいホームページをチェックして、当社に対する新しい印象をもっていただければと思います。


2012年10月18日木曜日

スピード、ベクトル、家族愛

日亜化学の副社長にご挨拶に伺いました。日亜化学は、ご存じの通りLEDの世界トップシェアの会社ですが、昨今の国内電機業界の不振、一向に戻る気配のない円高、韓国企業の日本進出といった厳しい外部環境の中で日々闘っておられます。中でもサムスン電子をはじめとする韓国企業には頭を悩まされているものの、韓国が日本より優れている点が3つあると仰っていました。それは、①スピード ②ベクトル ③家族愛とのこと。

スピード: 成功している韓国企業はオーナー企業が多く、その特徴としては意思決定のスピードが非常に早い。環境の変化が早い中で、すぐに意思決定をして進んでいかなければならないが、日本は政治も経済も企業も意思決定が遅く、そのスピードについていけていない。

ベクトル: 韓国企業は社員のベクトルがひとつの方向を向いている。そのため、組織として企業として大きな力を発揮することができる。しかし、弱い日本企業は向かっている方向がバラバラなだけでなく、外部へ向かってしまうこともあるため、上司に意見をする前に、社外に愚痴をこぼすといったことが起きてしまう。

家族愛: 韓国は家族で生きている、組織で仕事をしているという意識が強く、”愛”で結束されている。しかし、日本はひとり孤独に仕事をし、家族愛や愛社精神に欠けるところがある。

これらの点は会社の経営にとっても重要なポイントだと思います。以前の記事でも書きましたが、私が会社にとって最も大事であると思っているのは「ビジョンを共有して意識をひとつにする」ことです。ひとりひとりの力を結集して大きな推進力にしていくということ、これが組織で仕事をするということだと考えています。また、このブログのタイトルでもあります「あさひ愛」も、社員が「愛」をもって結束することで、大きな団結力を生み出すという考えでもあり、今日の話は非常に共感することができました。

今の日本の製造業は、こうしたポイントが欠けることで、力を落としているのではないかと仰っていました。日本、また日本人の基本的な考え方は民主主義ですが、民主主義を重んじ過ぎるがゆえに、なかなかまとまりきれず、組織として、企業として、国として力を発揮できていないのかもしれません。強いリーダーシップが行き過ぎると「独裁」になってしまいますし、民主主義が行き過ぎてもまとまらない。そのバランスがとても大事だと思います。昨今のような厳しい環境下においては、民主主義も大事ですが、強いリーダーシップをもって、スピード、ベクトル、愛を追及することも必要だと感じました。

2012年10月11日木曜日

役員合宿


10月8日は当社65年目の創立記念日でした。会社の平均寿命は30年といわれる中で、その倍以上に渡って事業を継続できたことは誇るべき事実であり、またここまで当社の長い歴史を築いてこられた先輩方に改めて敬意を表したいと思います。さて、この記念すべき日に役員全員の気持ちをひとつに前へ進んでいきたいという思いから合宿をしてきました。まずは、当社の生みの親である創業者に、さらなる事業の継続と発展を誓い、また困った時の神頼み、この苦境を乗り切るための力添えをしてもらおうということで、墓参りをすることにしました。創業者の墓は富士の裾野の広大な霊園にあり、爽やかな秋晴れの中、墓前に手を合わせてきました。役員の多くは訪れるのは初めてということで、いい機会だったと思います。

その後ホテルでゆっくりと温泉に…つかる間もなく、3時間近くかけて下半期の各自のコミットメント設定を行いました。役員には事前に、この下半期に自分が「役員生命」をかけて達成する目標数字を検討しておくように伝えてありました。合宿は、その数字について合意することと、部門目標、行動計画などについて意識合わせをすることが大きな目的です。前回の記事でも触れましたが、私が経営において最重要視しているのは、社員の意識をひとつにすることです。そのためには、まずトップが同じ方向に向かなければ社員がついてきてはくれません。これからどこへ向かって行くのか、そのためには何が重要で、いま最も注力すべきはなんであるのか、この共通認識をもったうえで下に落とし込んでいく必要があります。

私は前職でもよくこの合宿を経験しました。チームビルディングのための合宿と言われ、節目ごとに行われていましたが、チームづくり、組織づくりのためには、1〜2時間の会議では難しく、行き帰りの移動から、食事、イベント、会議、風呂、酒…そういった時間を共有することで生まれてくる何かが大事なのだと思います。だからスポーツチームは必ずキャンプをするのでしょう。

今回、役員だけの合宿は初めての試みとなりましたが、慌ただしくはありましたが、神聖かつ有意義な時間を過ごし、良いチームビルディングができたと思います。

2012年10月1日月曜日

あさひ3Gスタート

本日10月1日、私が旭シンクロテック社長のタスキを受け取り走り出すことになりました。現在の経済情勢など、当社を取り巻く環境などからしますと、箱根駅伝でいうところの第5区(小田原-芦ノ湖の山登り区間)走者といったところでしょうか。最大の難所ではありますが、この区間に抜擢されたエースのつもりで全力で走りぬき、65年間途切れることなくつながれたこのタスキを、次の走者につなぐことが私のミッション(使命)だと思っています。これからも引き続きよろしくお願いします。

社長就任にあたり、私の会社経営に対する考え方について簡単に話をしたいと思います。私が会社にとって最も大事であると思うのは「ビジョンを共有して意識をひとつにする」ことです。私には強烈なカリスマ性があるわけでも、特別な頭脳があるわけでも、また長年の会社経営経験があるわけでもありません。その私が社員を束ね会社をリードしていくためには、皆さんの中から湧き出るエネルギーに頼るしかありません。皆さん自身が前に進んでいく力、この力を大きなものにして一方向に集中させることで、組織として会社として最高の力が発揮されるのだと思います。そのためには、どこへ向かって進んでいくのか、何故そこへ進んでいくのかということを理解、納得し、その思いを前へ進むエネルギーに変えてもらう必要があります。ですから、私は折に触れて会社のビジョン、考え、思いを皆さんに伝え、エネルギーを発揮してもらうとともに、その方向性をひとつにすることで会社全体の大きな推進力に変えていきたいと思っています。これが私の考えるビジョン経営です。

当社のビジョンは「設備のソリューションカンパニー」です。この言葉は、私が3年前に入社以来伝え続けてきていますから、一度は耳にしたことがあると思います。私は、どの業界のどの会社であっても、お客様にソリューションが提供できない会社に価値はないと思っています。私たちがお客様の課題やニーズに応えられる会社であるからこそ、価値に感じてもらえるわけですし、そのソリューションがお客様の期待値を上回るものであれば、それは感動につながり、結果として深い信頼関係を築くことができます。そして、お客様に価値があると同時に、同じビジョンに向かって進んでいるビジネスパートナーや社員にとっても価値ある会社でなければ真のソリューションカンパニーとはいえません。全ての判断基準はwin-win-winであるかどうかにあると思っています。

それでは「価値」とはどのようなものでしょうか?価値ある会社であり続けるためにはどうすればよいのでしょうか?まず、価値は相手の基準で判断されるものであり、自分で決めるものではありません。つまり相手が何を価値に感じるかということを必ず意識する必要があり、自分の基準を押し付ければそれは単なるエゴにすぎません。次に、価値の基準は徐々に高まっていくものです。ある時点では価値に感じていても、時間の経過とともにそれは「当たり前」なものに変わっていきますから、常に価値を与え続けるためには、進化を続けるしかありません。進化はここまですればよいというものではなく、生き残っていくためには永遠に継続する必要があるのです。

継続的進化のためには、「意識」「しくみ(環境)」「スキル」が必要だと思いますが、やはり根底にあるのは「意識」です。前に進みながらも、次の進化形を意識する。克服すべき自分の課題、市場や顧客ニーズの移り変わり、ニーズに応える術をどのように身につけるか、こうしたことを現場に従事しながら、お客様とコミュニケーションしながら、そこで見聞きした事実をもとに常に意識していくことが重要なのだと思います。(これが「動きながら考える」知的体育会系です)

さあ、当社のビジョンに向かって意識をひとつに進んでいきましょう。そして皆さんの持っている力を思う存分発揮してください。あさひ3G(3rd Generation=第3世代)のスタートです。

2012年8月22日水曜日

N製紙釧路工場竣工式

N製紙釧路工場におけるクラフト紙製造設備の竣工式に出席しました。本設備は、従来新聞紙を抄いていたマシンにクルパックという機械を入れることで、同じマシンで新聞紙とクラフト紙の両方を生産することができるという、世界初の設備となります。クラフト紙とは、無漂白パルプを用いた茶色の紙で、セメントや米などの重量物を入れる包装袋や封筒などが主な用途となります。また、クルパックとは、包装袋が重量物を入れても破損しないよう強度を増すための機械で、今回はこの機械を既存の生産ラインに組み込む改造工事でした。

釧路工場では従来より新聞紙に特化して生産をしており、首都圏にも出荷をしてきましたが、昨今の新聞をはじめとする情報メディアの紙離れによって需要が減退し、厳しい状況に陥っていました。そこで、従来通り新聞の需要にも応えつつクラフト紙も製造できる生産体制を整え、生産量の拡大を目指したというわけです。また、釧路工場では、既存のパルプ設備をレーヨンなどの繊維を製造できるように改造するなど(10月に稼働予定)、低迷する製紙業界を支えるべく新技術の導入を進めています。

市場ニーズの変化によって、製紙業界でも従来の核となる技術を活かした新しい製品の開発、生産体制の構築が進められています。これは、製紙業界におけるある種の改革でもあり、当社にとっての新たな市場の創出でもあります。是非、業界や地域そして当社の発展のためにもこうした改革を進めていただきたいものです。

2012年8月3日金曜日

Asahi SWAT Team

今月の社内報でも特集されましたが、当社では4月から特別チームを設置して社内の業務改革に取り組んでいます。チーム名はAsahi SWAT Team(AST)。SWATとは、Special Weapons and Tacticsの略で、アメリカの警察に設置されている特殊部隊のことです。突入班、狙撃班、交渉班などの役割に分かれて、通常の警察では対処できないような事件が起きた際に出動する特別チームになります。今回このチームをSWATと名付けたのは、業務改革というチャレンジに果敢に挑み(突撃)、従来の業務プロセスの問題点を的確に捉え(狙撃)、あるべき姿を見出すとともに社内を説得して浸透させる(交渉)という過酷で重要なミッションをもっているからです。業務というものは、決められたルールに沿って繰り返し行われるものですから、一度体にしみついてしまうと、なかなか変えることは難しいものです。仮にそのやり方に問題があったとしても、その問題点を明確にして新しいプロセスを作り出すことは非常にエネルギーを必要としますので、自ら手を挙げて改革を進めていくなど、簡単にできることではありません。

ここで「業務」と定義しているのは、「人から人へ情報を流し、意思決定をすること」であり、「業務の流れ」は、「情報の流れ」とも言えます。ヒト、モノ、カネに加えて情報が第4の経営資源とみなされるようになった今、情報という資源をうまく活用できるかどうかが成否の分かれ目になると言っても過言ではありません。変化の激しいこの時代に、チャンスをモノにし、リスクを回避し、迅速に行動するためには、情報のコントロールが絶対に欠かせません。このポイントが、今回当社が業務改革に着手しようと考えた出発点でもあります。情報技術(IT)の進歩が、情報の伝達スピード、加工スピードを一気に加速させ、適切な人に、必要な情報を、リアルタイムに届けることができるようになりました。あとはこの技術を普段の業務(情報伝達や意思決定)にどのように取り込んでいくかを考えることになります。

ASTは、まず現在の業務プロセスがどのように流れているかを整理して、コンプライアンス、利益向上、リスク回避、業務効率などの面から抱えている課題点を全て洗い出しました。見積や予算に対する妥当性の確認、より精緻な原価の予算/実績管理、適切な価格での調達、追加工事における利益喪失の回避などを実現するための対策を検討し、情報システム等の仕組みを何も変えずに克服する方法を検討しました。ここまでがプロジェクトの第1段階(フェーズ1)です。現在はちょうどこのフェーズ1が終了し、これから社内への浸透へ向けて全国キャラバンを実施予定です。

次に、新原価管理システムを導入して工事台帳を電子化。実行予算、原価実績に加えて注文書/請書、請求書などの関連書類を含め工事関連情報を一元化して関係者で共有します。現在運用しているオフコンとの併用期間を経て(フェーズ2)、最終的には新会計システムを導入してオフコンからの完全移行となります(フェーズ3)。プロジェクトが完了するのは2013年末を予定しています。

重要なことは単に情報システムをオフコンから入れ替えると言うことではなく、あくまで業務のあるべき姿を実現するという観点に立ち、情報技術を使ってそれを実現するという考え方で進めていることです。そして、そのあるべき姿というのは、コンプライアンス、利益向上、リスク回避、業務効率を実現するものであり、今の時代に求められている情報のコントロールを行うということでもあります。

業務プロセスが変われば、皆さんの仕事の仕方も変わります。一時的には面倒なこともあるかもしれませんが、この主旨をよく理解してSWATチームとともに改革に取り組んでいきましょう。


PS
AST発足時に映画S.W.A.TのDVDを見て士気を高めました。皆さんも是非!

2012年7月23日月曜日

ゆで蛙にならないために

先日、協業先であるS社より、社内研修の基調講演として「当社における変化」についてご紹介する機会がありました。S社では今年から、全社をあげて「変化」に取り組んでおられ、意識改革から具体的な改善項目の洗い出し、解決策の検討と実践、実践後のレビューと進めてこられました。S社では、従来より主なターゲットであった半導体業界が不況に陥るなどの市場要因に加え、様々な内部要因から生じる課題を乗り越え、今後大きく飛躍していくために、様々な改革にチャレンジされているそうです。その中で、こうした改革に着手されているのはS社だけでなく、異業種や他社においても、同様に変化に対するチャレンジをしている企業があるということを知っていただくために、事例紹介として当社にプレゼンテーションを依頼いただいたというわけです。

当社が身を置く建設業界は、一般的に構造不況と言われている業界です。それに加え、これまで当社が多大なる恩恵を受け、多くの経験を積んできた紙パ業界もリーマンショック以降不振が続いており、当社にとっては非常に厳しい市場環境となっています。また、市場環境の変化に伴い、旧来から運用し続けてきた、様々な制度や業務プロセスにも少しずつ歪が生じはじめ、当社を取り巻く厳しい環境を乗り越えるためには、多くの改革が必要です。以下に当社でこれまで、またこれから行っていく改革について整理したいと思います。

1. 意識改革
人は意味もなく変化を強要されることには強い抵抗を感じます。これは当然の反応だと思います。ですから、まず何故変わらなければいけないのかという背景と、どのように変わっていくのかというビジョンを明確に理解してもらう必要があります。私は事あるごとに、「工事請負会社から設備のソリューションカンパニーへ」という中期ビジョンを口にするようにしています。これは、当社における改革の旗印であり、その方向性を端的にあらわした言葉でもあります。そして、トップと社員、社員どうしの情報交換、情報発信の場を創出し、トップが何を考えているのか、今何をすべきなのか、何故すべきなのか等をできるだけ伝えようと思います。(本ブログもその一環です) 
また、ライン管理職などの幹部社員は、四半期に一度2日間の合宿を行い、方針や戦略の共有、意見交換等を行っています。会社が変わるには中枢となる幹部からということで、この2日間は通常業務を行わずに集中して討議することで、意識改革と戦略の落とし込みができる場です。

2. 人事・組織改革
この4月より、事業(事業/営業戦略の立案と推進)と拠点(施工と拠点営業)のマトリックス組織を作りました。これによって、従来欠如していた事業ごとの戦略立案と、施工部隊の生産性の向上を実現します。事業統括部は、建築・環境・紙パ・産業の4事業それぞれの市場や顧客を鑑みて、中期的な事業/営業戦略の立案と推進を行います。市場の動き、顧客の特性、事業ごとの当社における課題等は、その事業によって全く異なります。これらを十分理解した上で、個別の戦略を立案できる体制を構築しました。一方で拠点となる営業所統括部では、事業横断的に受注物件の施工に従事し、生産性の高い人員配置を目指します。こうした事業と拠点のマトリックス組織構造により、全ての案件を営業と施工、中央営業と地域営業など双方から支援し合える体制を整えました。
また、同じく今年度より人事制度を改定し、従来の年功要素の強い制度から、スキルや貢献度を重視した制度に移行しました。その主旨や内容については以前の記事でも触れましたので参照してください。(人事制度改定①

3. 営業改革
上記の組織改革でも触れましたが、当社の従来の営業手法は戦略性に欠けていた部分がありました。案件があるところ、引合をいただいたところに行くのは当然として、市場や顧客、競合、当社の事業戦略に応じた戦略的なアプローチが必要です。今回の組織変更により、事業ごとの事業/営業戦略を立案する役割を持つ組織を創設し、当社における各事業の中期計画(今後どのように事業を伸ばしていくか)を検討、牽引していくことになります。
また、意識改革のところでも触れたソリューション提案という手法についても、営業におけるひとつの武器として、ソリューション推進部という提案営業を推進する技術者部隊を創設し、新規顧客開拓、既存顧客の売上シェア拡大、顧客関係の構築を目指しています。

4. 業務改革
当社の業務プロセスは20年ほど前に作られて以来ほとんど変えられることなく継続されており、その大半が過去の様々な事情を考慮して作られています。また、同時に構築されたオフコン(業務コンピュータ)の性質に依存していることもあり、あるべき業務プロセスとは乖離が生じています。
当社では4月より、採算性の向上、リスクの早期回避、迅速な意思決定等を目指して、特別チームAST (Asahi SWAT Team) を編成して、社内の業務プロセス改革を進めています。本プロジェクトでは、現在の業務プロセスを全て洗い出し、あるべき姿を検討するととともに、新しい業務システムの活用を並行して進めています。詳しくは改めて説明したいと思います。




改革というのは痛みを伴います。自分自身が変わるのは面倒ですし辛いものでもあります。しかし、外部環境に適応し、変化していくことは、生き延びていくためには必ず必要なことなのです。「ゆで蛙」という表現があります。蛙を熱湯の中に放り込めば、熱くて飛び出してしまいます。しかし冷水の中に蛙を入れて徐々に熱していけば、水温の変化に気づくことができずにそのままゆでられてしまうというわけです。外部環境は少しずつ変化しています。こうした環境の変化を敏感に感じながら、適応しようという努力を継続するということが、変化の激しい時代には求められているのだと思います。環境の変化を意識しながら、この改革を一緒に乗り越えていきましょう。


2012年7月2日月曜日

ご安全に

今週は全国安全週間です。会社や協力会によるパトロールが様々な現場で行われることと思います。以前、あるお客様から伺いましたが、事故や災害は守るべきルールを守らなかったことによって発生することがほとんどだそうです。本当はルールで定められていることがあるけれど、少しくらいいいか、いつもの作業だから大丈夫だろう、そういった気持ちから意図的にルールを守らなかったことが原因で発生するということです。

そういう意味では交通ルールに非常に似ています。速度制限が40kmとなっていても、速度制限通りに走っている車はほとんど見ません。むしろ、ノロノロ走っていて迷惑がられることさえあります。しかし、それは40kmを超えていることに気づかないのではなく、少しくらいスピードを上げても大丈夫だろう、自分のドライビングテクニックであれば問題ない、とある意味で意図的に速度制限を破って走行していると言えるでしょう。

では、片側が断崖絶壁になっていて、連続カーブで対向車が見えにくく、かつ双方向にすれ違うことが難しいほど狭い道路ではどうでしょう。おそらく速度制限が何キロであろうと、スピードを落とし、慎重に走行しませんか?ですから、そうした危険な道路では、必然的に交通ルールは守られ、事故も起きにくい状況にあるのではないかと思います。工事現場でも同様です。初めてのお客様、初めての作業、大規模でスケジュールがタイトな案件、そうした現場では、皆が慎重に作業を行いますからほとんど事故が発生しません。逆に、何度も経験している作業、慣れた現場、慣れたお客様、といった現場で起こりがちです。

ですから、事故や災害は気持ちの持ちようで大きく変わると言えます。危ないという意識があればルールを守り事故は起きにくいわけですから、どのような現場で、どのような作業であろうと、そうした危機意識を持ち続けられるかということが影響してくることになります。安全活動自体、同じことの繰り返しですから、「慣れ」につながりやすいです。そのためにも安全管理部門には、いつも新しい刺激が与えられるような施策を期待したいですし、個々の現場でも常に作業員への意識付けが必要ですね。意図的にルールを破ろうとしたその瞬間に、このことを思い出して、踏みとどまってほしいと思います。

ご安全に。

2012年6月13日水曜日

仲間との思い出

昨日は近内さん、小幡さんの送別会でした。お二人は建築、プラントそれぞれの事業を役員として引っ張ってこられた方で、約40年にわたって当社に貢献いただきました。ほぼ全ての参加者から一言メッセージをもらいましたが、皆さん思い出がありすぎてとても一言では語りきれず、後半はスピーチ中に大半の参加者が座ってしまう状況に。。。私がこの世に存在する前から当社で活躍されていたわけですから、確かに思い出の数も深さも大変なものでしょう。スピーチを聞いているとお二人がどれだけ当社に貢献いただいたかがよく分かります。そこで気づいたのは、どちらかの方とは深い関係にあったのですが、もう一人とはほぼ接点がありませんでしたという人が結構いたことです。前述したようにお二人の経歴は、建築とプラントで異なるために仕事上のお付き合いはどちらかに偏ってしまっていたのでしょう。それにしても当社にはわずか200名の社員しかいませんから、お二人が40年間在籍している中でほとんど接する機会がなかったというのも寂しいことです。当社は全国各地に拠点がありますから、社員は散り散りになり、勤務地や担当事業によって必然的に交流が限定的になりがちです。しかし、会社の同僚というのはお互い助け合う仲間であり、また切磋琢磨するライバルでもありますから、ひとりでも多くの社員と交流を図ることで、自分自身のスキルや経験も上がり必ず成長できるはずです。今年度から、建築とプラントの壁を取り除き、事業間の人材交流を図ることで、生産性の向上と経験値の共有を目指しています。また、研修や懇親会など勤務地や事業の枠を超えて交流できる場を多く作るように意識しています。こうした機会をうまく活用して、是非会社在籍中に交流したことがないという人をなくして、一人でも多くの仲間と深い思い出を作って欲しいと思います。退職時のスピーチネタが少しでも増えるように、、、改めまして、お二人の今までの功績に感謝したいと思います。有難うございました!

2012年5月23日水曜日

会社人生は「評判」で決まる

以前よりお付き合いのあるコンサルタントの方が最近執筆された非常に刺激的なタイトルの本を読みました。通常の人事評価に加えて、組織内の「評判」がどのように会社内の人事に作用するのか、また「評判」を上げたり下げたりする要因はなんであるかなどが書かれており、非常に共感できる内容でした。

昨今、様々な意思決定において「評判」が重視されることが多くなってきています。電化製品などを買う際に必ず見るのがカカクコムが運営する価格.comです。その時点での提供価格を比較して最安値のショップを提示してくれるうえ、実際に購入、使用した感想や意見が投稿されているのでとても参考になります。また、レストランを探すとき、私が最も信頼をおいているのが、同じくカカクコムが運営する食べログです。このサイトで高評価かつ、投稿されているコメントから、私の好みと近しいと感じられれば、行ったことのないお店でもほぼ間違いありません。最近では、お店の名前や、電化製品の名前で検索をすると、そのお店やメーカーのホームページより上位に、クチコミサイトや個人のブログなどが表示されることからも、クチコミ=評判が重視されていることが分かります。これは、クチコミを読むことで、実際に使用したり、食事をしたりする疑似体験ができ、イメージを作ることができるからではないかと思います。

抜擢人事などを検討する際には、過去の人事評価の結果だけでなく、その人の上司、同僚、部下がそれぞれどのような見方をしているのかということを参考にすることがあります。スキルを高め、結果を出しているということはもちろん重要なのですが、やはりマネジメントに登用するような人であれば、直接人事評価には表れにくい、人格や人望といった要素も持ち合わせている必要があります。そうした要素が「評判」といったかたちで表れてきます。人事上の意思決定の際にも、事前に評判を確認することで、その人を登用した際の良い面、悪い面を事前にイメージすることができるということから、意思決定において重要な意味を持ちます。

評判というものは、故意に作ることができるものではありません。以前、まさに上記の食べログでやらせ投稿が問題になったことがありました。一時的にサイトの信頼性が懸念されましたが、私の中での信頼度は変わっていません。やはり、意図的に操作されたコメントはどこか不自然で、実体験に基づいたものではないことが伝わってくると思います。逆に実体験に基づく真の投稿は、非常に臨場感があり、共感できるものが多いものです。

本書では、評判の悪い人というのは、
  1. 自分の実力を誤認している、ある意味「自意識過剰なナルシスト」
  2. 自分はさておき他人のことをとやかく言う、いわゆる「評論家」
  3. 自分の立場を理解していない、勘違いの大きい「分不相応な人」
とあります。
逆に評判の良い人とは、
  1. 自分自身をよく分かっており「他社への十分な配慮のできる人」
  2. 「評論家」の逆で、労をいとわない「実行力の人」
  3. 自分の立場や役割を正しく理解し「本質的な役割の果たせる人」
評判の良い人の項目は、一見すると当たり前だなという感じを受けますが、どちらかというと評判の悪い人の項目には共感できるところがありませんか? 自分の周りの評判の悪い人というのは、必ず上記のどれかに当てはまっているのではないでしょうか。詳しくは本書をお読みいただきたいと思いますが、やはり組織での評判というのは、”自分”を理解し、”相手”を理解し、”組織”を理解するということのような気がします。その理解に欠けた、空気の読めない言動が評判に影響を及ぼすのでしょう。先にも言いましたが、評判は日々の自然な言動から生まれるもので、意図的に作り出すことはできません。ですから、他人の目ばかり気にして評判を上げようとするのは逆効果です。しっかりと自分を見つめ、正しい言動をしていれば、自ずと評判があがり、自分自身をサポートしてくれるはずです。

2012年5月14日月曜日

マナーの常識

先日「たけしのニッポンのミカタ」という番組を見ました。若者VS大人のマナーがテーマで、若者、大人双方が感じるマナー違反について意見交換をするというものでした。私くらいの年齢ですと、どちらの立場の意見にもうなずけるところがあり、中立的な立場で番組を見ていました。携帯電話、特にスマートフォンの普及に伴うマナーのありかたというのは、若者、大人ともに考えなくてはいけないのかなと感じました。番組内で非常に面白い映像が紹介されていたので紹介します。あるヴィオラ演奏会の途中で、携帯電話の着信音が鳴ってしまった時に、演奏者がとった行動です。この奏者は、自分の演奏を邪魔されたにも関わらず、即興で着信音を演奏してお返しするという粋な演出をしました。
しかし、ビジネスシーンでマナー違反があった場合、相手がいつもヴィオラ奏者のように粋で広い心の持ち主とも限りません。その場で咎めてくれる方であればまだましですが、何も言わずにその人や会社が、非常識のレッテルを張られてしまうことも考えられます。

ビジネスマナーというものは、会社の文化とも通じていると捉えられることもあり、会社でしっかりと教えておかなければ、その社員だけでなく会社のイメージにも大きな影響を与えます。一度身につけてしまえばクセになりますから、自然に振る舞うことができ難しいことではありませんが、逆に間違ったマナーがいつの間にか身についてしまうと、悪気なく永遠にマナー違反を繰り返すことにもなりかねません。

私は社会人になって初めてついた上司にずいぶん色々とマナーを教えていただきました。今までの社会人人生の中で自分のものとして身についていますので、今では私の中の常識になっています。しかし、常識になっているがゆえに、この常識から外れたシーンに遭遇すると大きな違和感を感じます。最近違和感を感じたマナー(マナー違反)をいくつか紹介します。

  • 目上の人に「ごくろうさま」と言うのは失礼である。(「お疲れ様」もしくは帰宅時には「失礼します」と言う)
  • エレベータでの別れ際では、ドアが完全に閉まるまで頭を下げている。
  • 相手の話は絶対に遮らない。特に相手から質問をされている途中で、その回答を話し始めない。
  • メールで何かを依頼されたら、了解したこと、対応の時期などをすぐに返信する。
  • 殿は目下の人に対して使用する、もしくは役職の後につける。役職の後に様をつけない。
  • 各位の後に殿や様をつけない。
そのレベル感はまちまちですが、私が当社に入社してから何度か当社社員による上記マナー違反が複数回見受けられました。特に、以前「役職名と敬称」でも書きましたが、不適切な敬称をつけて話したり、メールを送信したりするのは、非常に恥ずかしいことだと思いますので最低限身につけてほしいと思います。マナーとは、仕事ができるできない以前の問題です。いくら仕事ができても、マナーが身についていない人とは仕事はしたくないと仰る方も少なくありません。マナー違反を見かけたら、躊躇せずに指摘して正すようにしていきましょう。

2012年4月17日火曜日

質問をするためによく理解しておく

皆さんは1日にどれくらい質問をしますか? 何か不明なことがあったときに、人は質問をします。そしてその答えを入手することで、知識を身につけ成長します。私の3歳の息子は、毎日50回は質問してきます。

息子:どうして○○なの?
父:△△だからだよ。
息子:△△って何?
父:××をすることだよ。
息子:どうして××をするの?
父:××したいから。
息子:どうして××したいの?
父:どうしても!
息子:ねえ、どうして?
父:・・・(無視)

みたいなやりとりが毎日続きます。しかし、このやり取りは、1年前にはありませんでした。3歳になって、色々な知識、経験、感情を蓄積し、本人なりに色々と考えられるように成長したから、質問攻めができるようになったのでしょう。この質問のやりとりは、大抵の場合は親サイドが、面倒になって強制終了させてしまいますが、まれに「なるほどな」とか「いいところをついてくるな」と思わされることがあります。質問されることで、こいつよく分かってるな、成長したなという印象が与えられるわけです。

よく、「何か質問ある?」の問いに、「何を質問していいか分かりません」と答える人がいます。そうです、分からなければ、質問ができないのです。質問は、分からないときにするものなのですが、分からな過ぎると、質問もできないのです。ですから、質問をするということは大事なことです。私は新入社員に、「必ず毎日質問をすること」と入社当日に話をしました。初めての社会、環境、会社、仕事、、、その中で毎日分からないことの連続です。ですから、少しでも分からないことがあれば、そのままにせず、すぐに質問をしてクリアにするようにと言いました。(新入社員の皆さん、覚えてます??) しかし、質問に至るまでのことをよく聞いて理解していなければ、質問をしようと思ってもできません。ですから質問をしようとすれば、自然と話をよく聞くようにもなるのです。そして、よく話を聞いたうえで的を射た質問をしれば、「よく話を聞いているな」という印象を相手に与えますから、会話やコミュニケーションが発展します。

お客様とのコミュニケーションにおいて質問は非常に重要です。デキル営業は「よく話す」と思われがちですが、一方的にマシンガンのようにセールストークをするのは最低な営業です。営業に必要なのは「よく話す」ことではなく、「適切なことを話す」ことです。相手が求めていることを伝えなければ、セールストークもただの騒音になってしまいます。相手が求めていることを知るためには、質問をして「よく聞く」ことが必要です。ですから、「よく話す」ことより「よく聞く」事の方が、遥かに重要なスキルなのです。

また、分からないことだけでなく、本当は分かっていることでも敢えて質問することで、お客様のことをよく理解しているという印象や、理解したいという熱意を与えることができます。そのためにも、お客様のことをよく理解しておくことが必要です。単に、全然分かりませんという態度で臨むのではなく、「私の理解はこうですが、これで正しいですか?」などの質問であれば、なおいいでしょう。重要なことは、質問をするためによく理解しておくということ、そしてできるだけ多くの質問をするということです。

2012年4月13日金曜日

品質かそれともコストか

ある特殊紙メーカーのお客様が、「最近、品質を重視すべきかコストを重視すべきなのか分からず悩んでいる」という話をしておられました。お客様が製造しているのは、精密機器に使われる非常に繊細な製品であるため、その品質には細心の注意を払っておられますし、また高品質であるがゆえに、現在世界トップシェアを維持しておられます。しかし、最近では海外企業とのコスト競争が激しく、多少の品質は落としてでも、価格を下げてほしいという要求が強い。周りを見渡しても結局”安い”方が勝っているように見えると仰っていました。日本が世界に誇る製造業、特に電気業界は、完全に中国、台湾、韓国などの企業にシェアを奪われ、すでに過去の栄光となりつつあるように思えます。彼らは国のバックアップのもと、急速なグローバル展開を実現しています。長引く円高をはじめ、政治的な問題も多分にあるものの、私たち日本の製造業自体も意識を変えなければいけない部分もあるのかもしれません。

日本の製造業は、長年に渡りその品質を売りにしてきました。今でも品質は世界トップクラスであると思います。しかし、世界の市場では、多少品質を落としてでも低価格であることが優先されつつあります。私たち日本人も、日本の製造業の品質を自負しつつも、消費者の立場となると一転してコストを優先するケースも増えています。今求められているのは、品質よりも価格、もしくはイノベーション(革命)です。iPhone, iPadといった携帯端末は、明らかに私たちのライフスタイルに革命をもたらしました。品質ももちろん高いですが、革命をもたらしたことが、大ヒットにつながった要因だと思います。逆に革命をもたらすことができないのであれば、品質よりも価格が重視されるということでしょう。しかし、今まで品質最優先で培ってきた”職人気質”は、そう簡単に変えられるものではなく、そこに市場ニーズとのギャップが生じているのだと思います。価格を下げろと言われても、体にしみついた職人魂が品質を下げるなどということを許しません。最高品質のものを最低価格で提供できれば問題ないのですが、それがそう簡単ではないためにジレンマが生じます。

私は、この悩みは建設業を含む全ての製造業で起きていると思っています。まさに当社もこのジレンマに悩まされています。私が社員に当社の強みは何かと聞けば、必ず高品質、納期厳守、誠実などを挙げてきます。現場の仕上がりを他社施工と比較すれば一目瞭然、機能性、見た目ともに抜群で、随所に細かい配慮がされています。長年に渡って受け継がれてきた職人魂を感じます。しかし当社も今、熾烈なコスト競争の真っただ中にいます。その競争の勝つために、品質を落として施工するか?そんなことは職人魂が許しません。そこにジレンマがあるわけです。

このお客様と話をしたうえでの私の結論としては、まず品質を維持しながらコストを下げる努力を最大限に行うこと。そのうえで、品質重視であるかコスト重視であるかをお客様に選択してもらうということです。もちろん、低品質でいいですか?と聞けば、いいと言うわけがありません。ですから、コストを下げるための様々な仕様のオプションをお客様に提示し、どこまでの仕様ダウンは許容範囲であるかを見極めていく必要があると思っています。最近よく、松竹梅もしくはAプラン/Bプランで見積を出すようにと話しています。もちろん、複数の設計を考慮しなければいけないため、見積作成には時間がかかります。しかし、このひと手間をかけて、お客様に価格と仕様の双方を納得いただかなければ、受注もできませんし、win-winの結果にもなりません。自分たちの勝手な思い込みで最高仕様の設計をすることは、単なるエゴにもなりかねません。この点でも、お客様のニーズを読み取るということが必要になってくるのだと思います。

2012年4月12日木曜日

ソリューションカンパニーへの第一歩

新年度のスタートにあたり毎年恒例の全社研修会(稼働中の現場もありますから実際に集まることができるのは6割ほどですが)を行いました。リーマンショック以降非常に厳しい状況が続きましたが、昨年度はやっとトンネルから抜け出し、今年度から始まる中期計画の出発点に立つことができました。そこで今回の研修会では、一昨年に掲げた当社のビジョンである「設備工事会社から設備のソリューションカンパニーへ」というスローガンについて、社外のゲストスピーカーの講演も交えながら改めて理解を深める機会としました。

まず、ソリューションカンパニーと設備工事会社のちがいについて、改めて以下の3つの観点から説明します

1. きっかけは「ニーズに対応」→「ニーズを読み取る」
顧客から提示された要求やニーズに対して受け身の姿勢で応えるのではなく、こちらから顧客ニーズを読み取り、そのニーズに積極的に応えていく必要があります。お客様のニーズは年々複雑化し、高度になってきています。また、課題が潜在化していてお客様自身が課題に気づいていない、もしくは整理しきれていないこともあります。まずは、お客様がどのような課題を持っていて、そこに潜んでいるニーズはどのようなものであるかを読み取ることが、案件のきっかけとなるのです。

2. 勝負は「価格」→「提案」
案件の価格競争は年々厳しさを増していっています。コスト削減や効率化を進めて提示価格を下げる努力も必要ですが、提案によって案件や当社自体の付加価値を上げ、そこで勝負することが重要です。

3. 目的は「つくること(工事)」→「価値を生み出すこと(ソリューション)」
ビジネスの目的、つまり利益の源泉は、工事をしてつくることではなく、つくることによって生み出される価値にあります。お客様は、どのような価値がもたらされるかということに対して投資をするということを意識してください。

ソリューションカンパニーとしてのビジネスの流れは、お客様のニーズを発掘し、そのニーズを満たすための提案をし、その提案を具現化することによって価値を創り出すとなります。肝となるのは、自分の知識の引き出しをたくさん持って、お客様のニーズに最適なソリューションを適宜引き出しから出せるかどうかにあります。


当社は、お客様のニーズを満たすことができる様々な技術を持っています。多様な施工技術を保有していますし、ハイレベルな設計力もあります。こうした技術は当社の有力な売り物(商材)なわけですが、まだこれらの商材に対する知識にバラつきがあり、うまくアピールできていないように思えます。まずは、当社にどのような商材があり、その商材がどのような価値を提供できるのかをしっかりと理解することから始めましょう。今年度は、改めて当社の施工技術力、設計力などを棚卸し、その優位性をアピールするためのツール作りやトレーニングを実施したいと思います。ひとつでも多く引き出しを持ち、全社員がソリューションカンパニーへの第一歩を踏み出せるよう頑張りましょう。

2012年3月15日木曜日

知的体育会系

何度か知的体育会系人材を目指そうということを話したことがあります。今回は知的体育会系人材とはどのような人材なのかについて触れたいと思います。知的体育会系人材とは、「頭がよくて運動もできる優等生」のことではありません。一言で言えば「動きながら考えられる人」です。今の時代は、めまぐるしく変化する世の中の環境に、いかに迅速に対応できるかで明暗が分かれます。考えるだけで行動しないのはもってのほかですが、行動あるのみでも変化にはついていけません。よく、物事がうまく進まない時に、「頑張ります!」という人がいます。もちろん頑張ることは大事なのですが、今までと同じことをひたすら体力と精神力の続く限り頑張ることは、もしかしたら間違った方向へ邁進して、泥沼にはまってしまう可能性もあります。何故うまくいかないのかを考え、方向修正が必要なこともあるのです。

スポーツの世界では常に異なるシチュエーションで勝負することが求められます。私は学生時代にバレーボールを10年間やっていました。バレーボールというのは、特に流れが重要なスポーツです。個々のスキルが高いチームでも流れが悪ければあっという間に試合に敗れてしまうこともあります。ですから、どのように流れにのるか、流れを引き寄せるかを考えながらプレーする必要があります。プレー中にも細かい読みが必要です。スパイクを打つ瞬間に相手のブロックや守備をみながらその間を抜いたり、逆にブロックに跳ぶ時には相手のスパイカーの助走の向きや目線、ボールとネットの距離などを見て、瞬時に跳ぶ位置やタイミングを図ります。

このようにスポーツというのは、体を使うと同時に頭を使いながら、瞬時に様々な状況判断をしてプレーしているものです。変化するシチュエーションごとに最適な動きをとることができるようになるには、動きとその結果を細かく振り返ることです。なぜうまくいかなかったのか、どうすればうまくいくのかを考えて次の動きに活かす、そしてまた振り返る。この繰り返しが変化に即応できる体を作ります。仕事にも同じことがいえます。日々の仕事の中で、計画、行動、振り返りを繰り返し、市場や環境が変化しても最適な判断と動きがとれるようにする。知的体育会系とは、まさにそういう人材といえるでしょう。もちろん体育会系としての体力や元気さも必須項目ですけどね!

2012年2月27日月曜日

祝 10,000ページビュー!

おかげさまで本日10,000ページビュー(ブログのページが表示された回数)を達成しました!あさひ愛ブログを初めてから8カ月、当初は何人かの社員が見てくれたらいいかなと思って始めましたが、徐々にその範囲は拡大し、最近では社外の取引先や知人からも、「読んでるよ」と声をかけていただくことが増えてきました。解析ツールによると、何故かアメリカやロシア、ドイツなどからのアクセスもあるようで???ではありますが、まあ会社の知名度が上がると思えば悪いことではありません。。。

今後も、基本的には当社の社員に向けたメッセージとして発信していきますが、是非社外の方にも読んでいただき、当社や小職に対する理解を深め、「あさひ愛」をもっていただくきっかけになればと思います。また、これは私の一方的な独り言サイトではありませんので、社内外問わずに是非コメントをいただければと思います。

少し更新頻度が落ちてきましたが、引き続き頑張ってメッセージを発信していきますので、これからもよろしくお願いします。

人事制度改定④

今回は具体的な人事評価の手法について説明します。新人事制度では、年齢や勤続年数よりもスキルや成果の要素を重視した体系になっています。しかし、スキルや能力を持っているかどうか、もしくは成果が出たかどうかという結果主義で評価すると、すぐにひずみが出てきてしまいます。能力が高くても、その能力が発揮できず成果が出ないこともあるでしょうし、また逆に能力が低くても運がよく、たまたま成果が出てしまうこともあります。つまり、能力をもっているかどうかと、成果が出るかどうかは、必ずしも一致せず、持っている能力を発揮して、その結果として成果につながったかどうかを見る必要があります。

そこで、新人事制度では「目標管理」という手法で評価を行います。「目標管理」というと、各自の立てた目標とその進捗を管理して、目標が達成できたかどうかによって評価をつけるというイメージを受けます。確かに目標の設定とその達成度で評価を行うのですが、それだけで捉えると少し本質とズレてしまいます。そもそも「目標管理」というのは、"Management by Objectives"(以下MBO)の日本語訳なのですが、実はこの訳があまり適切ではありません。MBOとは、目標設定およびその進捗度、達成度を確認することを通じて、社員の方向性をひとつにしたり、育成をしたりするマネジメント手法です。つまり「目標を管理する」というよりは「目標によってマネジメントする」という方がより本質に近づきます。ですから、誤解を避けるために、あえて「目標による管理」とか、英語のままMBOと呼ぶケースも少なくありません。

当社が導入する目標管理では、全社員が半年に一度、半期に達成しようとする目標を設定し、期末にその達成度を自分自身で評価します。つまり、従来は非公開であった評価項目を自分自身で設定して、その結果を自分で振り返るということになります。自分自身で評価項目を設定するわけですから、何をすれば評価が高くなるかは明白です。しかし、勝手な目標を立てて、勝手に自己評価したのでは統制がとれませんから、目標設定後に上司と面談をして、その内容について合意してもらいます。そして、期末にも再度面談を実施して、評価結果についても合意してください。

目標を設定する際に重要なことは、部門の目標を達成するための自分自身の目標を検討することです。目標管理を実施する前に、部門長は自部門の目標を設定して所属員に公開し、次にその目標達成に貢献できるような目標を、個々が設定するのです。言うまでもなく、部門の目標は、その上位組織もしくは会社全体の目標を達成するための部門目標として設定してありますから、会社全体->上位組織->自部門->個人 の流れで目標設定がされることになり、個々の目標は必ず会社の目標を達成するためにあるということになります。つまり、全社員が同じ方向に向かって進んでいくことができるようになるわけです。

期末の評価の際に重要なことは、評価者が期初に立てた目標が厳密に達成できたかどうか、ということを重視するのではなく、もし達成できなかったのであれば、何故達成できなかったのか。努力不足なのか、それともやむを得ない事情により期初の目標から逸れた業務をする必要があったのかなどを把握する必要があります。後者のケースでは方向性が変わった後に、どのような行動(努力)と成果が伴ったのかを整理して、軌道修正後の評価をしてやればいいのです。つまり、期初に立てた目標が達成できたかどうかが重要なのではなく、期中の行動が正しいものであり、成果が部門目標に貢献するものであったかどうかを把握して、その行動を認めることが重要なのです。その一方で、能力不足や行動の仕方が悪く目標達成ができなかった場合には、その理由を本人に気づかせ改善策について共有することで育成につなげることが重要です。単に「できなかったね」として終わらせるのではなく、何が足りなかったのか、どうすればよかったのか、そしてどうすれば改善されるのかを評価を通じて理解させてください。

このように、評価は単なる賞与や昇給を計算するための方程式としてだけでなく、そのプロセスを通じて組織マネジメントや人材育成を行うためのマネジメント手法と言えます。こうした考え方は従来なかったことですし、いきなり導入してすぐに機能するとは思えません。何より、評価をする側の手腕が問われますので、それ相応のトレーニングも必要でしょう。まずは、全社員がこの評価の考え方を理解して、何年かにわたって運用していく中で定着していければ思っています。まずは、このプロセスを通じて必然的に深まる上司と部下のコミュニケーションからスタートしましょう。

2012年2月21日火曜日

正義の味方 VS 悪の組織


少し前にFacebookで話題になったトピックスなので見たことがある人もいるかもしれませんが、面白い内容なのでここでも紹介したいと思います。正義の味方 VS 悪の組織の構図はテレビ番組や映画でも一般的ですが、どのケースでもこの特徴が当てはまります。私の息子がはまっているアンパンマンでも、何度アンパンチでぶっとばされようとも、へこたれずに様々なアイディアを駆使して悪さを続けるバイキンマンと、いつも事件が発生してから飛んできては、「許さないぞー」と言ってそのいたずらを阻止するアンパンマンの闘いが描かれていますが、この両者についても上記の特徴の多くが当てはまっています。

言うまでもなくビジネスにおいては悪の組織の精神や行動が求められることになります。「正義」と「悪」とすると少し違和感がありますが、業界#1の座にあってシェアを守ることに必死になっている大企業などは正義の味方に近く、常に新しいアイディアを生み出して業界に革新をもたらそうとチャレンジしている中小企業などが悪の組織に近いと言えるのではないでしょうか。

私はいつも「悪の組織」の精神と行動を忘れないようにしたいと思います。何度失敗しても、その失敗を活かしながら目標や夢に向かって突き進んでいく「悪の組織」には、見習うべきところが多々あります。一方で、成功体験にあぐらをかき、いつしか攻めの姿勢から守りに転じて進歩を怠ってしまえば、どこかで「悪の組織」に滅ぼされてしまうことになりかねません。私は「失敗は成功の始まり」であり、同時に「成功は失敗の始まり」であると考えています。夢や目標は明確に掲げ、そこへ向かって失敗と成功を繰り返しながら全社一丸となって進んでいくということが重要なのでしょう。笑顔を保ちながら。。。

2012年2月13日月曜日

インドネシアの経済成長


当社の海外現地法人のひとつであるインドネシアの客先および現場を訪問しました。インドネシア経済は近年急激に成長しており、先日の日経新聞にも、インドネシア政府が発表した2011年GDPは前年比6.5%増、2012年も6%代の成長を予測しているとありました。この高成長をもたらしているのは、国内消費、企業投資、輸出の3本柱とのこと。ジャカルタ市街の高層マンションに加えて、郊外でも多くの建売住宅地が開拓されており、居住環境が向上していることが分かります。また、現地当社主要客先のひとつであるフランスの飲料メーカーD社は、インドネシア国内向けのミネラルウォーター工場を次々と増設しています。(それに伴い当社の受注高も増加しています)飲料水を購入するという習慣が定着していることなどからも、インドネシア国民の生活が豊かになってきていることを感じます。


一方、継続的なデフレ、円高、国内消費低下などで日本の製造業は非常に苦しんでいます。生産コストの抑制、新たな海外市場の発掘を目的に、製造業の海外進出は加速しており、インドネシアはその労働力の安さ、内需の将来性などからも投資先として高い注目を集めています。年末年始に国内のお客様と話をした際にも、韓国や台湾といったアジア諸国の製品品質は、ほぼ日本に追いついてきており、海外企業や輸入品と競っていくためには、さらなる生産コストの圧縮に迫られている、という厳しい表情が印象的でした。以前からグローバル化とは言われてきましたが、ここへきてその波が加速度的に押し寄せていることは間違いありません。



当社としても、こうした動きに対応すべく戦略を練る必要があります。国内の建設投資は引き続き減少傾向で、競争環境はますます厳しくなっていきます。一方で製造業の海外投資比率は増加し、工場の建設ラッシュが続いています。現在インドネシアでは、日系製造業を中心に工場の新設案件が目白押しで、ゼネコンをはじめとする日系建設会社も対応しきれていないのが現状です。当社現地法人でも、工場の付帯設備から製造プロセスに至るまでの設計施工の案件を数多く受注しており、大手サブコンと肩を並べて大規模なプロジェクトをこなしています。今の日本国内ではとても経験をすることができないような仕事ばかりです。

しかし、こうした大規模投資がいつまでも続くわけではありません。投資が落ち着いてきた時に如何に安定的な事業を継続できるかは、投資が続いている今、どれだけ底力をつけられるかにかかっています。次から次へと降って来る目先の仕事をこなすだけになれば、必ず後々苦しくなることは必至です。継続的なメンテナンスを受注できるような顧客との関係作り、付加価値のある改造が提案できるための技術力などを、今のうちに築いていく必要があります。経済や顧客の動向を見極めながら積極的な展開を図っていきたいと思います。

2012年2月9日木曜日

人事制度改定③

今回は評価制度について説明します。今回の制度改定において、私が最も注力し大きくその位置付けを変えたいと思ったのが評価制度です。従来より、当社では年に2回の賞与査定、年に1回の職能査定を実施してきました。賞与査定は文字通り賞与を決定するもの、職能査定は昇給を決定するものですが、その評価項目は公表されておらず、また評価結果も本人にフィードバックされることもありません。本人が知ることができるのは、評価の結果としての賞与および昇給の額にとどまります。賞与原資はその期の会社の業績に左右されますから、必ずしも評価が高いから絶対的な賞与の支給額が高いとは限りません。そのため、支給額だけを見ても、それが評価が高かった結果なのか、それとも評価が低かった結果なのかを捉えることはできません。高い、低いという感覚は、あくまで自分の期待値や前回の支給額との比較でしか判断できず、それが社員のモチベーションに大きく影響します。そのため、せっかく高く評価されていても、自分の感覚とのズレによって、自分の働きが評価されていないと感じ、モチベーションを下げてしまう、ということが起こりかねません。


私は評価というものは、単に賞与や昇給を決めるための方程式として位置付けるのではなく、コミュニケーションツールとして機能させる必要があるのではないかと思っています。評価というプロセスを通じて、上司と部下のコミュニケーションの促進を図ったり、育成の機会を創ったり、成長の意欲を引き出すこともできます。そのためには、自分が何で評価されているのか、またどう評価されたのかを明らかにする必要があります。どうしたら高く評価されるかが明らかでなければ、どこに向かって行ったらいいのか分かりません。例えば、右に向かって走ることで高く評価されるとします。しかし、そのことが公表されていなければ、一生懸命左に向かって走ってしまう人も出てきてしまいます。「右に向かって走れば高く評価される」と公表されていれば、誰でも右に走っていきますよね?つまり評価項目が、評価する側とされる側、双方に理解され合意されている必要があるわけです。また、評価の結果を正しくフィードバックすることによって、何故自分の評価が低かったのか、何を努力すれば次回の評価が上がるのかを指導し理解させることができます。自分に不足していることに気づきを与え、成長の意欲を持つことにもつながります。こうした一連の上司と部下(評価者と被評価者)のコミュニケーションを評価プロセスに持たせ、社員の方向性をひとつにしたり、人材育成に活用していくことが、新しい評価制度の重要なポイントです。次回は具体的な評価の方法について説明します。

2012年1月25日水曜日

win-win パートナーシップ

材料メーカーS社を訪問し、協業について経営レベルでディスカッションを行いました。両社のビジョンや戦略、強み弱み、今後狙っていきたい市場などについて情報交換をした上で、協業のポイントや具体的なアクションプランまで落とし込むことができ、大変有意義な時間でした。S社は外資系メーカーでありながら、非常に日本的文化を持った会社であるという印象を受けました。また、倉庫/在庫管理から物流システムまで日本の市場にきめ細かく対応するための仕組みづくりも進めておられます。何より、品質に非常にうるさい日本市場からの意見を、本社が品質管理上の重要な情報源として認識していることにも驚きました。私は外資系ソフトウェアメーカーにいましたが、日本の品質に対する意見はなかなか理解されず、米国本社からは煙たがられたものです。。。

当社の中期戦略の柱のひとつに「協業によるビジネスの拡大」をあげています。短期間での事業の拡大および成長を実現するには、自社の力だけでは困難です。ですから、お互いの強み弱みを補完しあい、ともにゴールを共有できるパートナーとの協業が必要になります。商流上の付き合い(仕入先や顧客)だけでなく、横の付き合いを広げていくことが、様々なビジネスチャンスをもたらします。特に、お客様からの要求が多種多様になってきている昨今、各社とも事業領域を広げて、幅広い対応ができるように心がけています。しかし、周辺事業については、まだ確立できていないというのが実態ではないでしょうか。ここに協業のポイントがあります。

S社を含め、メーカーや商社は従来からモノを販売することで収益を得ていました。しかし、お客様は徐々にモノを買うにあたり、そのメリットや効果を求めるようになりました。さらに、製品単体での機能だけでなく、この製品を自社の現在の製造ラインに組み込んだ時の投資対効果を要求してきます。それには、製品単体の情報だけでなく、お客様の現設備に関する情報や、製品を組み込む為の工事費なども含めてトータルな提案をする必要があります。しかし、一般的にメーカーや商社にはそこまでの対応力がありません。そこで当社が調査、設計、施工などを担うことで補完することができます。

一方当社は、古くからのお客様とのお付き合いの中で、工事をすることで収益を得てきましたから、新規顧客開拓営業が苦手です。一度施工させてもらえば、その実力を理解いただけるのでしょうが、そこにたどり着くことがなかなかできません。そこで、苦手な顧客開拓についてはメーカーや商社に力をお借りしたいと思います。

このような双方にとってメリットがあるwin-winのパートナーシップが、今後当社が成長していくための鍵になります。S社ともこれから協議を詰めて、両社にとって大きな価値創造につながることを期待しています。


2012年1月17日火曜日

人事制度改定②

今回は「人事制度の基準」となる「等級制度」について説明します。等級制度とは、社員をその職務内容や責任範囲で区分けしたり、保有するスキルや発揮能力によって段階付けをしたりする仕組みです。採用、異動、評価、処遇、育成など全ての人事施策は、この等級制度に基づいて判断、実行され、人事施策の統一性、一貫性を維持できます。

等級制度では、大きく「総合職」と「一般職」に区分します。総合職とは、会社の事業を主体的に牽引する社員で、そのスキルや能力の高さによっては、管理責任を持ったり、役職についたりします。また、転居を伴う異動も行われることがあります。一方、一般職は会社事業を補佐的に行う社員です。サポーターですから、管理責任はなく、管理職になったり役職に着くこともありません。また、転居を伴う異動も行われません。

現在の工事職、営業職、技術職、事務職の一部は総合職の仕事といえます。事務職には、企画業務や社外の利害関係者との折衝など、事業に大きく寄与する業務と、伝票処理などの反復的な事務処理業務に分かれます。この場合、前者は総合職、後者は一般職の仕事といえるでしょう。社員の皆さんには、今回の制度改定のタイミングで、今の業務内容にかかわらず、今後総合職として働きたいか、一般職として働きたいかを選択してもらいたいと思います。この機会に自分自身の当社における仕事の仕方やキャリアについてじっくりと考えてみてください。

次に段階付けについて説明します。社員はそのスキルや発揮能力によって、総合職は6段階、一般職は3段階に段階付けがされます。この段階を等級といい、全ての社員には、どこかの等級が割り当てられます。また、それぞれの等級で求められるスキルや行動が職種ごとに定義されており、自分に割り当てられた等級ではどのような行動が求められるのか、また、ひとつ上の等級に上がるためには、どのようなスキルアップが必要なのかが分かります。自分自身で成長の方向性を見出すことに加え、上司と部下で人材育成に関する共通認識を持つことにもつながります。

等級と給与にも密接な関連付けがされています。等級ごとに、給与の最低額と最高額が決まっており、この範囲内で給与が支給されます。等級があがれば(等級があがることを昇格といいます)、最高額が引き上げられ、年齢に関係なく昇給し続けますが、同一等級でいる限りは、最高額に達した時点で昇給が止まります。つまり、継続的なスキルアップをして昇格しない限り、いつか昇給が止まってしまうということです。年功制では、長く勤めることにモチベーションを持ってもらいましたが、新人事制度では、等級制度という基準(モノサシ)を使って、上位等級に上がること、つまりスキルアップと会社への貢献度アップにモチベーションを持ってもらう仕組みなのです。

2012年1月7日土曜日

「こたえづくり」を利益に

みなさん、明けましておめでとうございます。この年末年始は、お陰様でいくつかの工事を請け負うことができました。正月返上で工事を担当してくれたみなさん、有難うございました。正月工事に代表されるように、下半期から年度末に向け、尻上がりに工事案件が増えてきています。また、来年度の予算計画に伴い、数多くの見積もり依頼もいただいています。ひとりひとりがこなさなければいけない仕事量が増え、負担が大きくなっているとは思いますが、3月までの限られた期間に、どこまで取り込めるかが、今期・来期の明暗を分けますので、力を合わせて頑張っていきましょう。

さて、新年にあたり様々な経営者が今年の方針や見通しを出していますが、概ね景気は上向きと見ているようです。しかし、当社プラント事業の客先となる主要な製造業では、リーマン、震災に続き、長引く円高に頭を悩ませています。円高の影響で、海外事業がマイナスインパクトを受けるだけでなく、海外製品の輸入、海外競合他社の参入も増え、国内市場でもさらなる価格競争に陥っています。各社とも、一層の製造原価の圧縮、生産効率の向上に努める傾向にあり、それが、当社の受注金額へ影響を与えることは間違いありません。

今までと同じ仕事を、同じようにやっていただけでは、得られる利益は下がってしまいます。主要客先が製造原価圧縮に取り組んでいるように、当社でも工事原価の抜本的な見直しを図らなければ、生き残って行くことはできません。同時に、お客様にとって価値ある企業として認識してもらえなければ、すぐに見放されてしまいます。しかし、お客様が求めていることと、当社の強みがマッチすれば、必ず利益につながるはずです。それが「ソリューション」なのです。

当社は2年前から、「工事請負会社から設備のソリューションカンパニーへ」をスローガンにしてきました。お客様から依頼された工事を行うだけでなく、お客様が何を求めているのか、何に困っているのかを見極め、それに対する「こたえ」を提案して、工事で形にしていくこと、これがソリューションカンパニーの姿です。「ものづくり」の価値はどんどん下がっていきますが、「こたえづくり」の価値はどんどん上がっています。今年は、この「こたえづくり」を利益につなげていきましょう。

今年も1年間よろしくお願いします。